Research

当研究室では、幹細胞がどのように機能を維持し、老化し、あるいは新たな機能を獲得していくのかを、細胞間相互作用・組織環境・先端解析技術の三つの視点から研究しています。とくに造血幹細胞を主なモデルとして、加齢にともなう機能変容の仕組み、発生過程における機能獲得・成熟化の原理、そしてそれらを読み解き制御するための解析・操作技術の開発に取り組んでいます。これらの研究を通じて、幹細胞生物学の基礎的理解を深めるとともに、再生医療・細胞医療・加齢関連疾患研究への展開を目指しています。

幹細胞老化の研究

加齢にともない、造血幹細胞は損傷や炎症に対する応答性を失い、分化の偏りや機能低下を示すようになります。しかし、こうした造血老化がどのような細胞間相互作用の破綻から生じるのかは、なお十分には明らかになっていません。当研究室では、骨髄内で造血幹細胞と前駆細胞がつくる空間的な集合体とそのダイナミクスに着目し、老化にともなう幹細胞機能低下の統合的理解を目指しています。とくに、幹細胞の休止維持、レジリエンス、分化バイアスといった現象が、周囲の造血前駆細胞や微小環境との相互作用の変化とどのように結びついているかを解析しています。また、細胞間ネットワークや細胞内状態の変化が、加齢した幹細胞の運命決定にどのような影響を与えるのかを明らかにすることで、幹細胞老化の新しい制御原理の提示を目指しています。

幹細胞の機能獲得・成熟化の研究

造血幹細胞は発生の過程で機能を獲得しますが、その成熟化を支える組織環境の実体には未解明な部分が多く残されています。当研究室では、発生期の造血幹細胞がどのようなニッチに支えられて機能を獲得するのか、またその過程を試験管内でどこまで再現できるのかという課題に取り組んでいます。そのために、ヒト多能性幹細胞や発生期組織に着想を得た培養系・オルガノイド系を用い、造血幹細胞と組織構成細胞、さらに血液細胞どうしの相互作用を統合的に解析しています。私たちは、幹細胞の成熟化は単一因子ではなく、発生過程にみられる多細胞間ネットワークの中で進むと考えています。この観点から、臓器側と血液側が相互に影響し合いながら成熟していく仕組みを明らかにし、未成熟な細胞に機能を付与する新たな基盤技術へとつなげることを目指しています。

先端的解析のための技術開発

上記の研究を支える基盤として、当研究室では高精細イメージング、単一細胞解析、空間情報を取り込んだ解析、遺伝子制御技術などの開発・最適化にも取り組んでいます。幹細胞とその周囲の細胞との関係を、より高い解像度で可視化し、定量し、操作するための技術基盤を整えることで、複雑な幹細胞システムの理解をさらに前進させることを目指しています。